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めめ報MEMEHOW

COLUMNS / ミームコインの流行サイクル 第3回

栄光と虚実──ラグプル、詐欺、そして「サイズの罠」

10倍、100倍という話の裏側には、それよりはるかに多い「ゼロになった話」があります。どういう手口があり、なぜ引っかかるのか。そして、どこを見れば避けられるのか。

先に結論

ミームコインの世界では、大半の銘柄が短期間で価値を失います。 これは悲観論ではなく、調査で繰り返し確認されている分布の話です。 コンプライアンス分析会社Solidus Labsの調査では、Solanaのローンチパッド Pump.fun上で発行された約700万件のトークンのうち98.6%が、同社がポンプ・アンド・ダンプやラグプルの判定に用いた 基準に該当したと報告されています。

つまり、ミームコインを買うという行為の既定の結末は「ゼロ」です。 10倍や100倍は、この分布のごく端で起きている例外にすぎません。 この前提を頭に置いたうえで、それでも面白いと思えるかどうかが、 この分野との関わり方を決めます。

1失敗の型を分類する

「詐欺だった」と一括りにされがちですが、実際には性質の違う失敗が混ざっています。 分けて理解しておくと、見分け方も変わります。

① 流動性の引き抜き(ラグプル)

最も典型的な手口です。開発者が流動性プールに入れていた資金を、 価格が上がったところで一気に引き上げます。 プールの片側が空になるので、買い手は売る相手を失い、価格は事実上ゼロになります。 「rug pull」=敷いてある絨毯を足元から引き抜く、という言葉のとおりの光景です。

② 売れなくする仕掛け(ハニーポット)

コントラクトに、特定のアドレス以外は売却できない条件を仕込んでおく手口です。 チャートは上がり続け、買うこともできる。ただし自分だけが売れない。 値動きが健全に見えるぶん、①より気づきにくい種類の罠です。

③ 内部者による供給の寡占

発行直後に、関係者が複数のウォレットに分けて供給の大半を確保しておく方法です。 外形上は多数のアドレスに分散して見えますが、実質は1人の持ち物です。 価格が上がった局面で順に売られるため、買った人の資金がそのまま内部者へ移る構造になります。 ホルダー数だけを見ていると分からず、上位保有者の集中度を見て初めて気づけます。

④ 有名銘柄への同名便乗

過去に別のチェーンで話題になった銘柄とまったく同じシンボル名を付け、 検索や記憶の混同を狙う手口です。中身は無関係の新規トークンです。 めめ報の観測でも、他チェーンで名前の知られた銘柄と同名のトークンが Robinhood Chain上に存在することを確認しています(編集部調べ、2026-09-02)。シンボル名は誰でも自由に付けられる——これは仕様であって、不具合ではありません。

⑤ 悪意のない事故

詐欺ではなく、単に実装が壊れる場合もあります。 2020年のYAM Financeは、供給量を自動調整する仕組みにバグがあり、約75万ドル相当が失われ、48時間以内にプロトコルが停止しました。 監査を受けていない新規のコントラクトは、悪意がなくても壊れます。 そして壊れた結果は、詐欺に遭ったときと区別がつきません。

⑥ 開発者の売り抜け

2020年のSushiSwapでは、匿名の創設者Chef Nomiが 開発資金として蓄えられていた分を売却し、約800万ドルを手にしました。 批判が集中した結果、数日後に1,400万ドル相当のイーサリアムを返金し、 プロジェクトの管理権限を他者に移しています。 返ってきたのは極めて例外的で、通常は返ってきません。

2「サイズの罠」──なぜ有名な銘柄では100倍が起きないのか

初心者がよく踏む間違いに、すでに有名になった銘柄を「これから10倍になる」と考えるというものがあります。これは算数で否定できます。

時価総額100億ドルの銘柄が100倍になるには、1兆ドルが必要です。 これは世界の主要企業の時価総額に匹敵する規模で、 犬の画像のトークンにその資金が集まると考えるのは無理があります。 一方、時価総額50万ドルの銘柄が100倍になっても5,000万ドルにしかならず、 こちらは実際に頻繁に起きています。

時価総額 50万ドル → 100倍 = 5,000万ドル(実際に起きる規模)
時価総額 5,000万ドル → 100倍 = 50億ドル(稀に起きる)
時価総額 100億ドル → 100倍 = 1兆ドル(現実的でない)

ここに厄介なトレードオフがあります。 倍率の余地が大きい銘柄は、例外なく小さく、無名で、検証材料が乏しい。 つまり倍率の余地とラグプルの危険は、同じ場所に同居しているのです。 「安全で、かつこれから100倍」という組み合わせは、構造上ほとんど存在しません。 この点を認めないまま探し続けると、結局どちらも得られません。

3なぜ分かっていても引っかかるのか

手口を知っていても被害は減りません。理由は、判断が行われる場所が知識ではなく時間の圧力の側にあるからです。

  • 速度:新規銘柄の値動きは数分単位で決まります。 調べているうちに動きが終わるため、「調べない」ことが合理的に見えてしまう
  • 取り残される恐怖:他人が儲けている様子だけが可視化され、 失った側の記録は表に出ません。成功例だけが残る偏りが、常に判断を歪めます
  • 少額だからという油断:1回1万円なら軽く見えますが、 速度が速い分だけ回数が増え、合計額は本人の想定を超えます
  • 物語の力:第1回で書いたとおり、保有すると人はその物語を広めたくなります。 買った時点で、疑うことのコストが上がってしまう

4確認できることの一覧

リスクをゼロにする方法はありません。ただし、買う前に機械的に確認できることはいくつもあります。 めめ報が全銘柄について同じ項目を並べているのは、この確認を毎回手作業でやらずに済ませるためです。

コントラクトアドレスで照合する
シンボル名は重複します。買う直前に、取引画面のアドレスと、 調べたときのアドレスが1文字残らず一致することを見てください。 手口④はこれだけで避けられます。
流動性の額を見る
時価総額ではなくプールに実際に入っている額です。 これが小さいほど、自分が売るときの価格は大きく崩れます。 「時価総額は大きいのに流動性が極端に薄い」銘柄は、出口が細いという意味です。
上位保有者の集中度を見る
上位10アドレスが供給の大半を握っていれば、手口③の可能性を考えます。 ホルダー数が多くても、集中していれば意味は薄れます。
コントラクトのソースが公開されているか
エクスプローラーでソースが検証済み(verified)になっていない場合、 何が書かれているか誰にも分かりません。 公式サイトの説明を裏づける方法がない、ということです。
追加発行の権限が残っていないか
発行者があとから無制限に増やせる設計なら、価値は希釈されます。 権限が放棄されているかは、公開されたソースを読めば確認できます。

ここまでのまとめ

  • Pump.fun上の約700万トークンのうち98.6%が、調査会社の判定基準でポンプ・アンド・ダンプまたはラグプルに該当した
  • 失敗には6つの型がある。詐欺だけでなく、実装事故も同じ結果をもたらす
  • 倍率の余地とラグプルの危険は同じ場所に同居している。安全で高倍率という組み合わせは構造上ほぼ存在しない
  • 知識があっても、速度・生存者バイアス・物語の力によって判断は歪む
  • アドレス照合・流動性・保有集中度・ソース公開・追加発行権限は、買う前に機械的に確認できる

前の回

ミームコイン流行サイクルの歴史──DeFi Summerから Robinhood Chain まで

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なぜRobinhood Chainなのか──GameStop事件の記憶が、チェーンの文化になった