COLUMNS / ミームコインの流行サイクル 第2回
ミームコイン流行サイクルの歴史──DeFi Summerから Robinhood Chain まで
流行は毎回まったく新しい顔でやってきますが、後から並べると同じ形をしています。6年分の熱狂を時系列で並べ、繰り返されている型を取り出します。
2020
DeFi Summer
プロトコルのフォークと利回り
2021
犬コインの年
著名人の一言と動物
2023–25
Solana量産期
誰でも数分で発行できる時代
2024
AIとニュース
機械が作り、事件が値をつける
2026
Robinhood Chain
株式文化がチェーンになる
先に結論
ミームコインの流行は、6年で少なくとも4回、はっきりと形を変えて訪れました。 対象は毎回違います。プロトコルのフォーク、犬、AIエージェント、政治。 しかし起きていることの構造はほぼ同じです。
共通するのは4点。①新しい発行の仕組みが登場する ②参加コストが劇的に下がる ③初期の少数が極端な利益を得る ④その話が広まった頃には終わっている。 この4段階は毎回繰り返されており、今のRobinhood Chainもその途中にあります。
2020DeFi Summer──「食べ物の名前」の夏
最初の大きな波は、ミームコインというより金融プロトコルの複製から始まりました。 2020年夏、既存のサービスのコードをそのままコピーし、 利用者にトークンを配って利用者ごと奪うという手法が流行します。
象徴がSushiSwapです。当時最大のDEXだったUniswapのコードを複製し、 「うちに資金を移せばSUSHIトークンを配る」と宣言しました。 いわゆる吸血鬼攻撃(vampire attack)です。結果として8億ドル超の流動性がUniswapから移動しました。 コードは同じ、違うのはトークンを配るかどうかだけ。それだけで資金は動いたのです。
ところが直後、匿名の創設者Chef Nomiが開発資金分を売却して 約800万ドルを手にし、猛烈な批判を浴びます。数日後、 彼は1,400万ドル相当のイーサリアムを返金し、 プロジェクトの鍵を他者に渡しました。返ってきたのは、後にも先にも珍しい例です。
この夏には、寿司、キムチ、ホットドッグ、ピザといった食べ物の名前をつけた複製プロジェクトが大量に現れました。 大半は数週間で消えています。 そして事故もありました。YAM Financeは供給量を自動調整する仕組みに バグがあり、約75万ドル相当が失われて48時間以内に停止しています。 悪意ではなく、単に急いで書かれたコードが壊れた例です。
2021犬の年──一言が価格になる
翌年、主役は技術から動物と著名人に移ります。 2013年に冗談として作られていたドージコイン(DOGE)が、 イーロン・マスクの繰り返しの言及によって大きく買われました。 言及があるたびに上がり、彼がテレビ番組に出演した直後には大きく下げる——個人の発言が価格そのものになる状況が、初めて広く可視化された年です。
この波でもう一つ重要なのがSHIB(柴犬)です。 匿名の作者は「ドージコイン殺し」を名乗り、発行時に総供給の半分をイーサリアム創設者ヴィタリック・ブテリンのアドレスに送りつけました。 本人の同意なしにです。
これは巧妙な仕掛けでした。有名人が持っているという事実が権威づけになり、 同時に「その半分は動かない」という見かけの安心も生みます。 しかし2021年5月、ブテリンは受け取った分の約90%を焼却しました。 当時の価格で数十億ドル規模にあたる量です。 「望まない力を持たされたくない」という理由でした。 このできごとがかえって物語となり、SHIBはこの年の代表的な銘柄になります。
2023–25Solana量産期──発行が無料になった日
次の波を作ったのは、銘柄ではなく道具でした。 Solana上に登場したローンチパッドPump.funは、 プログラムを書けない人でも数分でトークンを発行できるようにしました。
仕組みの中心はボンディングカーブです。 発行者は最初に流動性を用意する必要がありません。 買われるほど自動的に価格が上がり、公式ドキュメントによれば取引ごとに1.25%の手数料がかかり、 カーブが100%に達すると自動的に通常のDEXへ移行します。
この設計の意味は大きいものでした。発行のコストがほぼゼロになったので、「とりあえず出す」が合理的な行動になったのです。 結果、1日に数千件という規模でトークンが生まれ、 そのほとんどが数時間で消える世界になりました。
その膨大な数の中から、ごく少数が突き抜けます。 犬にニット帽をかぶせた画像だけのWIF(dogwifhat)は 2024年3月31日に1枚4.83ドルの最高値を記録し、 口を開けた猫のPOPCATは同年11月17日に2.05ドルを付けました。 いずれも用途は何もありません。画像と名前だけです。
ここで見落とされがちな事実があります。大手取引所への上場は、言われるほど価格を動かしていないという点です。 WIFが世界最大手の取引所に上場すると発表された際の上昇は25〜28%程度でした。数十倍になったのは、 その名前が誰にも知られていない時期です。ニュースになった時点で、その値動きはすでに終わっている—— これはこの分野で最も再現性の高い観察の一つです。
2024AIとニュース──機械が作り、事件が値をつける
2024年には、2つの新しい型が同時に現れました。
AIエージェントが主役になる
「Truth Terminal」という、自律的に投稿するAIボットが注目を集めます。 このボットに、著名なベンチャー投資家マーク・アンドリーセンが5万ドル相当のビットコインを無条件の助成として提供しました。 AIが自分の資金を持ち、自分で発言する——という物語に投資家の名前がついたことで、 関連するトークンに資金が集まりました。
注目すべきは、大手投資家の名前が実際に関与した稀な事例だという点です。 通常この分野は完全に匿名の世界で動きますが、この時だけは 「権威が本気で触れた」という信号が働きました。
ニュースそのものが銘柄になる
同じ年、アメリカで保護されていたリス「Peanut」が2024年10月末に当局に押収され、 その後まもなく安楽死させられました。 この一件は世論の反発を呼び、名前を冠したトークンPNUTが生まれます。 価格は11月5日の安値0.034ドルから、11月14日に2.47ドルの最高値まで、 わずか9日で動きました。
翌2025年1月には、アメリカ大統領就任に合わせて政治家名義のトークンが相次いで発行されます。 いずれも発行直後に急騰し、そしていずれも数週間のうちに大幅に下落しました。 この型では、値動きが起きる期間そのものが数日単位です。
+新しいチェーンが立ち上がるたびに
もう一つ、時代を横断して繰り返される現象があります。新しいチェーンが立ち上がった直後には、必ずミームコインの群れが発生することです。
2023年8月9日に一般公開されたBase(大手取引所Coinbaseが手がけるチェーン)では、 公開直後にBALDというトークンが1日で約3,100%上昇しました。 しかしその後、発行者が流動性を引き上げ、 報道によれば約2,560万ドル相当が引き出されて価格は崩壊します。 新しい土地に最初に来る人々の中には、必ず一定数そういう者が混ざります。
なぜ新チェーンで群れが発生するのか。理由は3つあります。①注目が集中している ②競合がまだ少なく目立てる ③チェーン側も利用実績が欲しいので歓迎される。 この3つが揃う期間は長くありません。数週間から数か月です。
そして2026年7月1日、Robinhood Chainが動き始めました。第4回で詳しく扱いますが、 このチェーンには過去のどれとも違う特徴があります。母体が、株式取引アプリだったということです。
繰り返されている型
| 段階 | 起きること | 2020年の例 |
|---|---|---|
| ①道具 | 新しい発行・配布の仕組みが現れる | 利回りによるトークン配布 |
| ②殺到 | 参加コストが下がり、複製が大量発生する | 食べ物の名前のフォーク群 |
| ③選別 | ごく少数が突き抜け、大半が消える | SUSHIは残り、大半は消滅 |
| ④周知 | 一般に知られた時には値動きは終わっている | 主要メディアの報道は事後 |
この4段階のうち、個人が参加できて意味があるのは②の途中までです。 ③の選別が終わってから入ると、残っているのは高値だけになります。 だからこそ、めめ報は新規上場を毎日記録し、 何がいつ生まれたのかを残しています。後から振り返れるようにしておくこと自体が、次の波での判断材料になるからです。